モョ

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シンセを触ろうね(基本的なシンセ操作解説とリード編)

この記事は大阪工業大学 Advent Calendar 2021 22日目の記事です。

adventar.org


はじめに

この記事の内容は音楽を作ったりシンセを触ったりする人向けです。CSLの部員に向けて作った記事ですがせっかくなので公開します。

内容としてはシンセサイザーの基本的な使い方と音作りテクニックになります。音楽理論とかは説明しないから知りたい人は自分で調べてね!!
今回は(おそらく)フリー最強シンセ「Vital」を使用して解説を進めていきます。ここから先はVitalをインストールしてから読んでね。

本当はベースとかまで書きたかったけど時間ないからリードだけです。ごめんね。
時間ができたら他の項目も書きます。

お前は誰

OITのOBです。utzboという名義で曲を作っています。
Twitterhttps://twitter.com/utzzbo
SoundCloud(作った曲が聴けます): https://soundcloud.com/utzbo/tracks

枚方キャンパスのCSLという音楽を作る部活に居ました。

単位を捨てて曲を作ったりしてたので在学中のCSL部員の方はそんなことしないようにしましょうね。

それでは解説に入ります。

ざっくりシンセの構造解説

大体のシンセはそうなんですがざっくり分けると4つの部分に分けられます

オシレーター:音を出す部分
②フィルター:特定周波数の音を削ったり大きくしたりする部分(説明がむずい)
エンベロープ/LFO:シンセの色々なパラメータに時間的な変化を持たせる部分
④エフェクト:音を歪ませたり残響を足したり色々やるところ

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これらを駆使してシンセサイザーでは音を作っていきます。
さっそく音を作っていきましょう。

事前に完成させたものがこちらになります

音を本格的に作っていく前にまずは解説用に作ったものをお聴きください

良い感じのメロディですね。Stonebank氏のサンプルパックからMIDIを拝借してきました。ありがとうStonebank

この曲はドラムとFX以外の音は全部Vitalで作られています。(外部のInsertエフェクトとかはQ3とかLFOToolとか使ってるけどね)

ちなみにこの曲のトラック構成はこんな感じです。

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ではこの曲のリードをどうやって作ってるかを見ていきましょう。

音を作ろう ~リード編①~

メロディがある曲では顔とも言える存在です。

この曲ではリードを3種類作り音を重ねています。この複数の音を重ねて一つの音を作る手法(以下レイヤーと呼びます)はシンセの音作りにおいて重要なテクニックとなりますので押さえておきましょう。

まず一つ目のLeadMidの音をお聴きください。

芯があり太い音ですね。

この音のパラメータ全体図はこうなっています。

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オシレーター部分は基本的なSaw波形二つと至ってシンプルです。

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ピッチ調整

真ん中の波形選択部分でSaw波を選んだら①でピッチ(発音される音の高さ)を変更しましょう。
PITCHの文字の右側の数字は-100~100まで設定できて、MAXに振り切ると音が半音上がります。逆に左側の数字は値が変わるとその分半音音が変化します。つまり1上げるとC3の鍵盤を押したときにD3、-12するとC3の鍵盤を押したときにC2の音が鳴ります。
これを利用してオシレーター2のピッチを-12しましょう。

位相調整

次に②のPHASE欄をいじります。ここでは音の位相をずらすことができます。

PHASEの文字の右側は「発音時の位相をどれぐらいランダムに動かすか」を変更できます。あまりピンとこないかもしれませんがここのつまみをいじるのは超重要です。今後の解説でも使いますので覚えておきましょう。
逆に左側は「発音時の位相の位置を指定」することができます。

これらのつまみを調整することで、二つ以上オシレーターが立ち上がっているときに音の鳴り方が変わります。 
実際に右側のつまみを別の値に調整したものを聴いてみましょう。
※変化が分かりにくいのでいったんシンセ内エフェクトは切ってます
元の方

位相をずらした方

音の鳴り方が全然違うと思います。二つの音の波の干渉が起こるから鳴りが変わっちゃうんですね。波の干渉についてはここでは解説しないのでわからない人は調べてください。

先ほど説明したPHASEの文字の右側のつまみをいじると発音時の位相がランダムになり、鍵盤を押すたびに音が変わるといったことが起きますので、ずっと同じような音の鳴り方をさせたい!というときはこのつまみを0%に設定しておきましょう。

いい鳴りをするところ見つけたら次に進みます。

エンベロープ調整

ここでも音の鳴り方を調整します。ざっくりシンセの構造解説の③の部分にあたります。

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6つのつまみがありますね。

それぞれ
DELAY:入力からどれだけ経ったら変化し始めるか
ATTACK:0からどれぐらいの時間をかけて設定した最高値に近づくか
HOLD:設定した最高値をどれぐらいの時間維持するか
DECAY:最高値からどれぐらいの時間をかけてSUSTAINの値まで減衰させるか
SUSTAIN:入力が続いているときに収束する値
RELEASE:入力が切れてからどれぐらいの時間をかけて値を0にするか

といった役割を持っています。
上記の中でもATTACK、DECAY、SUSTAIN、RELEASEはシンセ以外にもいろいろなソフトウェアで使いまくるので覚えておきましょう。一般的に頭文字をとってADSRと略されています。

文字だけだとわかりにくいとは思いますが、実際に音を鳴らしながらつまみをいじるとなんとなくわかると思います。Vitalではエンベロープ1がデフォルトで出力音量に割り当てられていますので、ENV1からいじってみましょう。でもリードではデフォルトからつまみを動かさずにそのままにします。

エフェクト

次はエフェクトを挿していきましょう。
Vital画面上部のEFFECTSをクリックするとエフェクト画面に移行します。ざっくりシンセの構造解説の④の画面ですね。

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LeadMidではコンプレッサーとディストーションを挿しています。
簡単に説明するとコンプレッサーは音の波形を圧縮するエフェクト、ディストーションは音を割るエフェクトです。詳しく知りたい方は調べてください。

芯になるリードはあまり音を広げずにバキバキに音を割るといい感じになってくれがちなのでバキバキに音を割りましょう。

まずはマルチバンドコンプレッサー(周波数帯域ごとに音を潰せるエフェクト)を挿して高音域を持ち上げ低音域を下げ気味にします。ATTACKのつまみを大きくするほどコンプレッサーのかかりが遅くなりバチバチした音になってくれます。RELEASEはリードでは適当でいいです。

音を潰したらディストーションで音を割ります。
MIX(エフェクトのかかり具合)とDRIVE(音割れの強さ)は何も考えずにマックスにします。しかしこのままだと高音域がクッソうるさいのでフィルターを挿しましょう。
FILTERのPre(音を割る前にフィルターを挿すモード)を選択し、BLENDを左側に振り切ってローパスフィルターにしたらCUTOFFを調整して高音域を削ってあげましょう。なんかいい感じに鳴る部分を見つけたらそこでフィルターの調整は終わりです。RESONANCEをいじると違った味を出せて面白くていいですよ。

以上でLeadMidは終わりです。

音を作ろう ~リード編②~

次はLeadColorを見てみましょう。
単体で鳴らすとこんな音です。

ハードコアとかよく聴く人だと聴いたことがある音かもしれませんね。

早速オシレーターから見ていきましょう。

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またSaw波形2つとシンプルですね。

今回も先ほどと同様ピッチとPHASEを調整した後、LEVELでOSC2のボリュームを下げています。が、さすがにこれだけだとあの音は出せません。
そこで使うのがLFOです。

LFO

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これですね。
LFOは設定した波の動きに合わせてつまみを自動で動かしてくれる機能です。先ほど解説したエンベロープと似ていますね。
エンベロープと何が違うかというと、エンベロープは入力が必要なのに対しLFOは動作に入力を必要としません(入力をトリガーにすることも可能)。なんか自分でも言いたいこと分からなくなってきた。

文字で説明してもややこしくなるので実際に使ってみましょう。

LFO1と書いてあるところにマウスカーソルを合わせるとひし形のマークが出てきます。

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この状態でクリックしLFOの動きを割り当てたいつまみにD&DするとそのつまみにLFOが割り当てられます(同じ方法でエンベロープも好きなつまみに割り当てられます)。
LFOをOSC1のPITCHの左側に割り当てたらこんな丸が出てきます。

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出てきたら丸を右クリックして「Make Bipolar」を押しましょう。このモードは何ぞやというと、LFOのかかり方をつまみから見て一方向にするか二方向にするかというものです。これに関しては説明がしづらいので調べるか実際に使って覚えてください…。

Bipolarにしたら出てきた丸を調整しLFOのかかる最大値を設定しましょう。今回は1.9ぐらいにします。Altを押しながら丸をクリックすると数値を手入力で変えることもできますので活用してください。

ここまで出来たら丸部分の調整は終わりです。次はLFOを触っていきましょう。

VitalのLFOはウィンドウ上でダブルクリックすると点を増やせるので、デフォルトの形から点を増やしてこれと同じ形にしてください。

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形を同じに出来たらMODEをSync(入力がある間FREQENCYの速さで動き続けるモード)に設定した後、FREQENCYの右側部分(デフォルトだと四分音符マークの部分)をクリックし、Secondsに変更します。その後FREQENCYの値を0.012にします。

設定が終わったらSMOOTH(LFOのかかり方を滑らかにする)好きな鳴り方をする位置に調整しましょう。DELAYをいじると鳴らしてから少し遅れてLFOをかけられたりもできます。STEREOの説明は割愛します。

これでLFOの調整は終わりです。エフェクトを挿しましょう。

エフェクト

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今回のエフェクトはこんな感じ。
先ほどと同様にマルチバンドコンプレッサーを調整した後、ここでは音により色をつけるためPhaserというエフェクトを挿しています。

Phaserはその名の通り位相を乱した音を原音に付加することで音をシュワシュワさせてくれます。

今回はPhaserのFREQENCYを8/1にして8小節分の速さで動くように調整しています。その他のPhaserに関する詳しい説明はすいませんが省略させてください(正直僕もあんまり分かってない)。他は画像と同じように調整しましょう。

以上でLeadColorは終わりです。

音を作ろう ~リード編③~

次はみんな大好きSuperSawを作ります。
音を聴いてみましょう。

この音は聴いたことがあるという人も多いのではないでしょうか。

つくりはこんな感じ

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これもSawしか使ってません。SuperSawなので
ここでもピッチ調整はしますがPHASEはそのままです。SuperSawではPHASEのランダムを0にすると逆におかしくなります。

エンベロープLFOは調整しません。

ここではユニゾンを調整します。

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ここですね。vと書いてある方をいじるとオシレーターから鳴る音が増えると思っていただけるといいです。16vだとOSC1が16個立ち上がってる状態です。
その状態でUNISONの右側のDetuneの値を調整すると16個の音の各ピッチが少しずつずれます。こうすることでよく聴くSuperSawの音ができるんですね。あまりDetuneを大きくしすぎると変になるので20%程に留めておきましょう。
その後UNISONの下にある紫のやつを調整します。ここでは音の中心成分を強くするか広がった部分を強くするかという調整ができます。LeadSideの名の通りこの音はワイドな音をレイヤーしますので若干広げ目にしましょう。

エフェクトはマルチバンドコンプをこのように挿して終わりです。

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簡単ですね。

これでリードの音作りは終わりです。

外部エフェクトをかけよう

ここからは少しシンセの機能からは離れます。さっき出来た音を重ねても微妙な音になるのでInsertで外部エフェクトを挿します。

LeadMid

そんなことを言っておきながらこれには挿しません。終わりです。

LeadColor

OTTというフリーのマルチバンドコンプレッサーという名のサチュレーターを挿して音をよりバキバキにした後、高音が耳障りなのと300Hz付近がLeadMidと被るのでEQで削ります。ここで使っているEQはFabfilter Pro-Q3を使ってます。便利なのでおすすめです。シンセ内部のEQはしょぼいのでQ3を使ってます。

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こんな感じで挿してます。

LeadSide

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このようにEQで300Hz以下を下げて1500Hz以上のSide成分を持ち上げています。MidSideを操作できるEQがないって?買いましょう。

これにて各トラックの外部エフェクトは終わりです。

重ねたものがこちらです

出来たものを重ねて鳴らすとこんな感じです。

だいぶいい感じですね。

本当はこの後に音にまとめてエフェクトをかけたりするんですがそこは割愛させていただきます。もう書き疲れた…。

知りたい場合はCSLの部員や知り合いの方でしたらDMなりなんなりで聞いてくれたら答えますので…。

おわりに

締め切りギリギリから書き殴ったので結構雑な書き方になってしまって申し訳ないですが、少しでも音作りのお役に立てたのであれば幸いです。

CSLの皆さんは単位を捨てない程度に曲を作りましょう!

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モロ宣伝なんですが、先日アルバムをリリースしました!!!!!
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https://utzbo.bandcamp.com/album/infinite-colors

よろしくお願いします…

おしまい